ZAP SPEED RACING TEAM





VOL.5:ちょっと脱線しようか!

プロ意識について書こうかと思っていたのですが、久しぶりに先日茂木東コースで快心のレースが出来たのでこの時のレースの流れを振りかえりながらドライバーの心理状態がレースにおける展開やラップタイムにあたえる影響とクラッシュについての考え方についてお話しします。

まずは私が担当したF-4から、今村選手は前回の富士のレースで大きなクラッシュをしてしまい。ライアンレーシング河野選手に3連勝されシリーズチャンピオンを狙うには今回の茂木はどうしても勝たなくてはならないレースでした。ご存知のように今村選手は2000年東北、茂木の全勝チャンプ。その為競ったレースが日本一決定戦の富士くらいで、正直なところ私は接戦や苦戦になった時のレースやシリーズに一抹の不安を抱いていました。
前回(F-4)富士でも今村選手自体は決して調子が悪いわけではなく充分勝算がありましたが、私のチェックミスもありクラッチトラブルを抱えていたのでスタートに出遅れてしまい追い上げ中に前走者のスピンを避けクラッシュしてしまいます。
「運がなかった」直接現場で見ていた人も後にテレビを見た多くの人からも「あのクラッシュはしょうがない無いよね」と言っていただいていましたが、私はそうは思っていませんでした、それを言えなかったのはトラブルを抱えていたことを知っていたし、それが私の責任でもある為強く言えなかったのです(笑)

富士と違い茂木ではF-4以上のクラスになるとパッシングポイントが少なく予選が大きなウェイトを占めます。今村選手のレースレポートにもあるように予選セットは不安を抱えたまま、まずはフレッシュタイヤの美味しい所を使いタイムアタック、なんとかうまくいきその時点で+0.4ほどのマージンがあったので、本来ならばピットインしてタイヤ温存の支持を出すところですが、前回予選最終ラップに逆転された河野選手がアタックを続けていた為、サインボードには+0.2の表示でそのままアタックを続けさせます。

富士での経験を生かし、今村選手はこれまでと違い大きく成長しています。コメントを聞いた時点で 私は勝てると確信したくらいです。不安を抱えた予選しかも絶対負けられないレースでのプレシャーのなかでのポールゲット!
「富士のことがあるので気を抜かずプッシュを続けていた」ラップで常にライバル河野選手を上回っていたため、河野選手の焦りを引き出し予選中にセット変更する余裕を奪うのに成功したパーフェクトな予選でした。
今回、今村選手の精神的な強さは予選終了後の彼のコメントでも良く現れていました。

私が言いたかったことは、前走車のスピンに巻き込まれてクラシュしてしまうのは100%とは言わないが必ず自分にもミスがあったと言う事です。チョット強引で乱暴な言い方かもしれないけど、いよいよ決勝レース、久々のポールスタートも無難にこなしはしたんですが2列目から藤沢選手がロケットスタートをきめ1周終了時では2位、スタート直後の3台による攻防は見ていても素晴らしかったです。問題は3位走行の河野選手とのバトル、ここで前回富士でのクラッシュの話しにもどります。

1.トップを走っていれば巻き込まれようが無い!そのポジションにいる自分が悪い
2.自分がマシン限界域で走っているのであれば、相手の技量、マシンの状態を的確に判断することにより、スピンに入る前の相手のわずかな挙動変化でスピンを察知し前走者がスピン状態に陥る前に回避操作を始めなければならない!

前走者の井上選手が初心者のように予想外の動きをして今村選手に絡んできたわけではありませんし、井上選手がスピンを起した時に自らのマシンをコース上でコントロールしようとすることも読めたはずですから、レース展開からしても富士での今村選手には焦りがあり、100Rでいっきに追い付いたことで、次のヘアピン進入でパスすることだけに気がいき、相手の挙動変化に気づくのが遅れた又は見逃したのがクラシュ原因の一つだったのではないでしょうか?私は今村選手にはそれくらいの能力があると思っているのでこんな厳しいことも言うのですが、今村選手どうですか? 反論はありますか?

どんどん話しは脱線して行きますが、以前テレビで「危険予知能力があるドライバー」という表現を使ってナイジェル・マンセルのことを語っておられた方がいました。でも私の考えでは予知ではなく予測です!
たとえば走行中、ブラインドコーナーに差し掛かるときにフラッグが振られていなくてもポスト員のわずかな動きで瞬間的に前方でなにかが起こったと予測してコーナーに進入すればたとえコース上に停止車両があったとしても悪くてコースアウト、まずクラッシュは避けられるでしょう?練習中ならなおさらで無理にタイムアタックを続ける意味はどこにもありませんからスローダウンすれば何事もなかったように抜けられるはずです。予測能力が無い後続者が前の人がすりぬけたにもかかわらずクラッシュするのを目にすることがありますが、もっとひどい人は黄端が振られているオープンコーナーですら停止車両の直前で慌てている人もいます。身に覚えのあるチーム員も沢山いるんじゃないですか?
また予測が付かないような危険な走行をする人(特に初心者に多い)などは動きが読めないのですから無理に追いぬかなくても自分が引けばいいのです。レース中じゃあないのですから、寄せて来て当てられたなんていうのは明かに自分のミスです。このように考えれば、一般道での追突事故と同じくレースでも突然オカマをほられた以外は何処かで自分もミスを犯していると言う事になりますね。

余談ですが、初心者の練習にまず仙台HRや茂木を薦めるのは走行台数の多い筑波で自分の運転に夢中でまわりを見る余裕が無い人は危険であり、クラッシュする確立も高いからで、空いているHRや茂木では人に迷惑をかけることが少なく自分の練習に集中することができるからです。
話しを茂木に戻しましょう。5ラップ目のダウンヒルストレートエンドでそれまでインを押さえていた今村選手ですが、この周完全にスリップに入られたため河野選手とのブレーキング勝負に出ました。本来なら前を走る今村選手がブレーキング勝負とはおかしな言い方かも知れませんネ!?

レース後の今村選手のコメントです。
「ブレーキングでは絶対河野選手に負けない自信があったので、自分よりブレーキングを遅らせると必ずコントロールできなくなると考え、目一杯ブレーキングを遅らせ、インを空けて誘いこんだ」 その結果河野選手はスピンしてしまいます。 まさにレース中自分と相手の状況を正確に判断し、全てを予測して勝負に出た今村選手の勝ちです。
河野選手もさすがでミスの被害を最小限に押さえ、すぐにレースに復帰してくるのですが!

河野選手に競り勝ったのち、前を走る藤沢選手のミスを逃さずトップに出た後もプッシュを続け最終的には5秒ほど2位を離しての見事な優勝でした。中盤以降ペースが遅く心配していましたが、後で聞いたところコースにオイルが出ていたそうで、ミスをしないよう慎重に走ったということで、今回は95点のレースでした。
残りの-5点は、大きなミスを犯した河野選手がコース上のスピンだけにとどめレースに復帰してきた後、オイルが出てるなかキレた走りでほとんどペースを落とすことなく、今村選手より1秒以上早いペースで走っていたことです。 
後半の河野選手のラップタイムを知るすべも無かったし、展開的にも2位を引き離して無理をする必要はなかったことに間違いはありません。ですから100点をあげたいところですが、たかがF-4クラス、たかが15周のレース、これからもっと上を目指していくのなら、トップだから、後ろが居ないからといってペースを落とすのでなく、その時のベストの走りでさらにミスすることなく優勝できるくらいでなければなりません。
今回も出走台数が多くもっとハイレベルになっていれば展開は違っていたはずです。

レース後に2位になった藤沢選手と話す機会が有ったのですが「オイルに乗ってミスをし今村選手に抜かれた後、精神的にまた同じように滑るんじゃないかと、どうしても守りに入り離されてしまった」「後半3位中島選手に後ろにつかれた時、またオイルに乗ってしまったがバックミラーを見ると中嶋選手も同じようにスライドしているのが見えたのでなんとか押さえることが出来た」今村選手に抜かれた後ペースが落ちた藤沢選手ですが、後半またペースが戻ってきました。この話しからもドライバーの心理状態で走りが変わるのが良く解りますね。

レース中に苦しい時は自分だけではない、自分のタイヤがたれてきた時は相手もたれている、コースコンディションもしかり、苦しい時にこそ頑張れなければライバルに勝てない!たかだか底辺カテゴリー、F-3だってそう!たかがF-3!常に自分のベストで走り、いつもコースレコードを狙うくらいでないと、けっして上は見えてこない!関東F-4の第4戦を例に出しお話ししましたが、伝えたいことが多くて巧く