ZAP SPEED RACING TEAM |
前回のコラムに出てきた「飛び級」について・・・。 ZAP SPEED出身のOBを振り返ると幾つかの例がある。 現在F-NIPPONやGT500で活躍する石浦宏明選手もFJは出場せずF-TOYOTAに飛び級。 GT-300の池田大祐選手はFJ日本一決定戦に出場したのみでF-TOYOTAに飛び級した。 F-NIPPONとGT-500で活躍する小暮卓史選手もFJには数戦スポット参戦したのみで、飛び級を果たした。昨年のF4シリーズチャンピオンの土屋祐輔選手もFJはもてぎの最終戦と日本一決定戦のみ。四人とも飛び級したカテゴリーで初戦から入賞しその後成功を収めている。 ステップアップは早い方がその後の可能性が広がる。その為にはステップをなるべく少なくするというのも方法である。しかし、タイミングが左右するので一概には言えない。 開幕戦は年に一度で、年頭にはそのスケジュールは決まっている。 メキメキと成長を見せるがトップレベルまではあと少し、数ヶ月先に開幕だったらと思えるドライバーも居るし、秋のオーディションで加入してきたドライバーが今このカテゴリーへ出ればトップを走れるがシリーズも後半にさしかかりタイトル争いに加わる事は出来ないという場合もある。実力がついてもその時期によって進路の選択も変わるという事だ。 ZAP SPEEDがFJやスーパーFJやF4等の国内カテゴリーだけやっているチームであれば、順に一通りのステップを踏ませて行った方が成績はあがりやすい。先に例を挙げた全日本ドライバー達にFJのシリーズを追わせていれば当然勝ち星もタイトルもチームの歴史に増えていただろう。しかし、その選手にとっては遠回りなだけで、もしもFJから順にやっていたらそのキャリアは1年遅れていた筈だし、今の位置まで行けたか疑問となる所である。 また、その逆もある。 メーカーなどが年齢を重視する傾向がここ数年見られた為に、自分の実力を顧みずステップアップを急ごうとするドライバーも見受けられた。先のチームから「飛び級」を薦めたケースと逆に、「君にはまだ無理だ。実力が伴って居ない」と止めたにもかかわらず、チームを離脱し他のチームやFCJ等に参加した例だ。 そして、こちらの場合成功例は一例も無い。 我々も20年以上レース界で生活をしてきて、その経験から言っているのだからもう少し聞いてくれても良かったのにと思い残念だ。 こちらは「飛び級」ならぬ「飛び込み自殺?」。 焦りという言葉が適当かも知れない。 レース経験が少なくてスキルを付ける必要がある場合も有る。 カートを含めても目立った戦績が無く書類選考の履歴にタイトルを添えたいとう場合も。勝つことでスポンサーを増やさなくては上のカテゴリーの予算が確保出来ない場合も。現状予算ではミドルフォーミュラは出来ないという場合もある。等々、人それぞれ事情もあるだろうから、ステップを減らすだけが一番という事では無く、自分にあった最良の道を選ぶ事が大切なのである。 その際若いドライバーは「少しでも速いマシンに乗りたい」「上のクラスに乗りたい」というエゴに似た自我に支配されやすい。成功には「何に乗りたいか」よりも「何に乗るべきか」に主軸を置いて考える方が合理的なのだが、合理性による成功確率については考えが及ばない事の方が多い様である。 ZAP SPEEDでは勿体なくても該当者が居なければシートを余らせるという事を度々して来たが、他チームでは余らせることなく実力にかかわらず金のためにシートを埋めるという例を見受ける事もある。 心の中で「えー、その子にそのクラスは荷が重すぎるでしょう!マシンに乗せられるばかりで学ぶべき事を学べもしないでしょう?」と思うこともしばしばだ。聞けばカートの世界にもその様な傾向があり、経済的に可能と見るや実力は無視してチューニングクラスを勧めてくるチームもあるそうな・・・。 「君の才能なら乗れる!」 とでも言われたら若いドライバーは舞い上がるのが普通かもしれないが、後戻りが生じたらかなりの成功確率を落とすことになる。自信を持つことは大いに結構だが、狭き門をくぐるには一歩一歩が重要なのだから、冷静に客観性を持って自分を見つめてみることが何よりも大事なのだ。 と、言っても、若いドライバーの心理としてはとても難しい事なのだけど。 (←前のページへ戻る) |
□■ 笹川健志 □■
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