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このコラムの【Vol.17 「兎跳び」って!?】でも触れたが、日本のスポーツ界は徐々に欧米に追いついているのだが、未だ遅れているのがトレーニングと栄養についての知識とそれを各競技に生かす技術です。 まず、フィジカルトレーニングと摂取する栄養は必ず考えて行わなければ、トレーニング効果は実を結ぶことは無い。こんな当たり前の事が一般の健康管理にまで浸透していないので、これからプロスポーツ選手を目指そうとする人でさえもが無駄な遠回りをする事になるケースが多い。スポーツで他人よりも良い成績を残そうとすれば、当然ライバルよりも優れた運動能力を必要とするが、その運動能力は筋力・心肺能力・反射など様々な要素を総合した能力で、一つ一つの項目に分けてその競技に適切な能力に最大限近づける、場合によっては過去に例の無いレベルを目指して開発して行く必要が有るのです。 この中で一つの例として筋力トレーニングを取り上げると、例えば【ウェートトレーニングするだけでは筋力は消耗してしてしまう。】 えっ?っと言う人も居るかと思うが、そう思った人は現時点で正しい知識を持ち合わせて居ない可能性が有るから注意が必要です。 大雑把に言えば、ウェートトレーニングをすると筋力がアップするのでは無く、ウェートトレーニングによって筋肉の一部が破壊され、その後の栄養補給+休養によって痛んだ筋肉が生理的に補われ初めて筋力がアップするのです。(筋肉のタンパク質をエネルギーに変える異化作用よりも、摂取したタンパク質での同化作用によって筋肉が作られるほうが優性で有る場合に筋力アップする) 一般的な日本人は、この説明にも落とし穴を持っています。と、言うのは【栄養】という言葉を曖昧に慣例的な表現手法として用いている事が多いからです。よく母親が「これは栄養が有るから食べなさい。」と言っているのは耳にしますが、自分も言われた事が有るのでは無いですか?食卓の中で「これは」と指していますが、食卓の上の殆ど全ての物で【栄養】が無い物は無いでしょう。まあ、そんな事を言えば「屁理屈だ!」とオヤジに怒られるのが日本の一般的な家庭では無いでしょうか?これが落とし穴に被せてある(貢献している)木の葉っぱ見たいなもので、【栄養】についてアバウトにしか見なくなる土壌が慣例の中にあるのです。 しかし、選手としてスポーツで良い成績を修めようとするならば、一般の人よりも正しい知識を付けて、効率的に取り組まなければ、自分の望む成績は得られないでしょう。 例として、筋肉を作る栄養とはタンパク質が中心となるが、トレーニングをするにはエネルギーとなる炭水化物や脂肪と言った3大栄養素が不足していてはいずれ支障をきたすし、一部分を掘り下げて、タンパク質の摂取と言っても、タンパク質はアミノ酸が多数結合してできたものであり、アミノ酸はこれまでに80種類以上が発見されている中で生物が利用するのは約20種類で、このうち体内で生成しないために食品で摂取しなくてはならない必須アミノ酸は8種類あり、必須アミノ酸は一定のバランスでのみ利用される為にどれか一つでも不足していると、そのアミノ酸に制限されて他のアミノ酸が利用されない事を知っておかなければ、たった1栄養素としてタンパク質の摂取でもアミノ酸スコアの低い食品では以上の理由から摂取量が相当量有っても有効では無かったりする場合も有ります。 さて、そのような知識も80年代前半までは洋書で辞書を引き引き苦労をして得なければなりませんでしたが、現在では日本語に訳された専門書も多く存在します。それでも、そういった専門書はボディビルやパワーリフティング等特殊なスポーツの専門書と思われている場合も有りますが、ウェートトレーニングで個々の選手が最大に知識を持っているのも、効果的なトレーニング方法を開発してきたのも、栄養とトレーニングの受給のバランスを科学してきたのも、自分の体を作るボディビルやパワーリフティング等筋肉を作る競技の分野の人達と、その分野を研究材料としてきた研究者達で、なにも全てのスポーツ選手がボディビルの真似事をした方が良いというわけでは無く、その最も進んだ研究成果を利用させて貰わない手は無いと言いたいのです。 モータースポーツでは、筋力トレーニングは選手に必要とされる努力のほんの一部分でしか有りません。だからこそ、余り多くの時間を投じる事も出来ない訳ですから、効率的なトレーニングが求められます。 ZAP SPEEDでは現在フィジカルトレーニングの指導もしているのですが、間違っても【これを何セットやれば良い】等という、原始的なトレーニングでは無く、個人個人の身体的特徴、現状の能力、生活での運動量、生活の時間的サイクル等を考慮して個々のメニューを作らなければ、効率的とはなり得ません。これは非常に手間のかかる事ですが、サーキットの練習も同じで、能力の違う複数の人間が同じメニューをこなして行くレーシングスクールというのは、時間と金の無駄でしか無いと思います。知識として、レーシングマシンが走る事・曲がる事・止まる事も物理的に把握していないといずれ障壁が乗り越えられなくなる可能性が有ります。 例えば、先程例にした筋力トレーニングと栄養の件と同様に、「何故車は止まるのか分かりますか?」と言う質問に「ブレーキを踏めば止まるに決まっている。」と、答える人がプロドライバーに成れる訳が有りません。ZAP SPEEDでは、質量や慣性・タイヤのグリップや路面摩擦・回転しているエネルギーを熱変換して空気中に放出する事など物理的な見方も教えるのです。 何のカテゴリーでも、その道を突き詰めて行けば、端折った(はしょった)部分はいずれ障害となります。そりゃあそうですよね道を極めるって事は、その道に精通するって事ですから。 一見遠回りに見えても、根本から理解する事こそ最大の近道になりうるのでは無いでしょうか?。 (←前のページへ戻る) |
□■ 笹川健志 □■
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